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Appoggio vol.14 2009 spring


対談

若き建築家が目指す「不動産を物件から物語へ変える」リノベーション

ウエブサイトの1万3千人の登録会員でリノベーション物件を満室にするブルースタジオの建築家大島芳彦氏と本誌編集長とのユニークな対談。木賃アパートのリノベーションと老朽木造建築の再生について熱く語る。
株式会社ブルースタジオ 専務取締役
株式会社ホワイトスタジオ 代表取締役社長
大島 芳彦さん +本誌編集長・江里口吉雄
アポジオ対談ページへ


江里口 私は相続に特化したFPとして仕事をしていますが、もとは住宅業界で、建築にも関わりました。大学時代に農学部で木材の勉強をしたり、 木 への思いもあるものですから、木造アパートのリノベーションに積極的に取り組まれている大島さんの活動は非常に魅力的に見えます。大島さんが建築を学ばれた学生時代から今の建築を含めた不動産総合コンサルティング業に至る経緯について、聞かせていただけますか。
大島 大学卒業後、組織事務所といわれる大きな設計事務所で、公共建築とかホールとかを手がけていました。あまり人間性というか人の生活が見えてこない仕事をやっていたんです。本来、建物の設計は人の生活に結びつくべきだと考えていましたので、せっかく設計をしたものがどういう使われ方をしているのか、それがわからないような設計は嫌だという気持ちがありましたね。
江里口 その気持ちが大きくなって会社設立へとつながったのですね。
大島 2000年ですから卒業して6年くらい経った頃です。建築学科の同級生の大地山が1998年に設立していたグラフィックデザイン会社ブルースタジオを改変し、彼と一緒に一級建築士・設計事務所を設立しました。彼は卒業後、グラフィックデザイナーとして広告の世界へ入っていました。広告の世界でも、作り手の思いとは関係なく、画一的な広告のされ方をしているわけですね。彼としては、せっかく一から作り上げた商品なのだから、商品としての付加価値を最大化できるような広告を作りたい。なのに、それができない。私の観点から言えば、消費者の目から見て本当に魅力的な建築とは何かを知って、魅力ある商品を作りたい。なら、それをビジネスにしようということで、一緒にやることになりました。
江里口 大島さんのお宅は不動産業を営んでおられますね。そうした背景の影響も受けられたのでしょうか。
大島 それもあります。うちは祖父の代から不動産業で、祖父は土地の分譲、父は賃貸経営を手がけてきました。ここも「大島ビル」という名前ですが、父が1960年代に建てた賃貸物件で40年以上経っています。そろそろガタがきているとはいえ、まだ建て替えるタイミングではない。何らかの手を加えてまたその価値を高めていかなければならない。価値を高めるといっても、40年前とはライフスタイルが大きく変化しています。コンテンツを入れ替えなければならない。ちょうどそういう時期になっていた。合わせて、不動産をもう少し身近な商品ととらえて、バリューアップも流通もワンストップで実現できるような仕事の仕方をしようと考えました。それが2000年です。
江里口 2000年というとJーREITですね。不動産の証券化の中で、土地至上主義ではなくて、キャッシュフローに基づいた建物そのものの価値を見直そうと言う時代がまさに到来したとき。
大島 建築設計をやっている立場からいえば、まさに 私たちの時代だ という感覚もあったんです。銀行にこの建物、この不動産を評価してくれといったところで、土地の担保価値だけで評価されますよね。でもそうではない不動産の考え方が出てきた。やっと設計士、建築家、デザイナーとしてアセットマネジメントの感覚でデザインができる時代になったのだと。
江里口 具体的にはどんなことを始められたのですか。
大島 建築、不動産、広告、マーケティング部分まで含めて一貫した不動産商品企画のサービスを始めるためのウェブサイトを作りました。アセットマネジメントとしての設計、アセットマネジメントとしてのデザイン、そういう標語を掲げて始めたんです。
江里口 建築・設計というご自身の専門分野と家業の不動産業とが結びついてきたのはこのあたりからですね。
大島 ウェブサイトを立ち上げたときに、消費者の観点と供給する観点、これを同時に持つためにはどうしたらいいか、悩みました。そこから行き着いたのが不動産仲介業だった。学生時代の部屋探しから始まって、私たちが家を探すとき、いちばん身近な存在なのは仲介業者。仲介業者こそが、ナマの声として消費者が何を求めていて、供給者はそれをどうとらえたらいいのか、それを知っているはずです。それまでの私たち設計は消費者の声が届かない場所ところで仕事をしていたわけですが、反対にいちばん届くところの仕事、それが建物に関わるビジネスでいえば、流通を担う仲介業だと気づきました。
江里口 ブルースタジオとホワイトスタジオという二つの看板を掲げておられますが、ホワイトスタジオが仲介業の会社ですか。
大島 そうです。ウェブサイトを店舗として、そこを窓口として物件にお客さんをご案内します。ウェブサイトで会員を募り、アンケートに答えていただいて会員登録をする形です。いま会員が1万3千名を超えました。会員のアンケートを通じたニーズを噛み砕きながら商品企画に役立てる。ホワイトスタジオのウェブ店舗では、私どもが設計するか、プロデュースするか、企画をするか、コンサルティングをするか、そういった物件しか扱いません。そうすると、一つのスタイルができあがって、そこに利を求めてくる人たちの囲われたマーケットができあがってくる。
江里口 それはどんな人たちなんですか。
大島 9割以上が東京周辺の方で、年齢は32〜35歳くらい。一人暮らしの方がだいたい半数。お子さんのいないDINKSを含めると8割近い。つまり可処分所得が高い世帯。そういう方が付加価値の高い住宅を望んでいる。賃貸住宅でいうと、彼らが求めているのは広さ12坪程度で間取りは1Kか1LDK。
江里口 10〜12坪で1K、1LDKという商品は新築でも供給されていませんね。
大島 だからバリューアップの手立てとして有効なんです。30年前の12坪・2LDKのファミリータイプを1LDKにバリューアップすれば新築に勝るかもしれない。そういったニーズを見極めてこそ、オーナーさんにバリューアップの提案ができるんです。そうして商品企画をして、出来上がった商品を会員にメールニュースでお伝えするという一つのサイクルを作っています。
江里口 バリューアップした物件の賃料の値付け管理もされるのですか。
大島 はい。相場とはだいぶ変わってきますね。築30〜40年だと新築の8掛け、7掛けぐらいの賃料が相場ですが、新築に近いレベルの賃料に設定できます。
江里口 そうすると、そこでリノベーションするコストはすぐに回収できると。
大島 そうですね。追加投資に対してリターンが1年間にどれくらいあるのか。利回りの感覚で追加投資、リノベーションしていただこうとご提案しています。
江里口 特定のエリアというのはありますか?
大島 会員の希望は、城南、城西が多いです。ただ、駅前の仲介業者が地域に基づいたエリアニーズ、地域ニーズを押さえているとすれば、私どもはライフスタイルニーズに基づいた考え方。その人のライフスタイルニーズを押さえていれば、なにも東急沿線でなくても、もっと合理的な賃料の場所であなたの求めるスタイルが手に入りますよ、と提案できる。そういう仲介業なんです。ライフスタイルニーズという観点は、不動産仲介に限らず不動産の商品企画において、まだまだ未熟なのではないでしょうか。
江里口 未熟どころかまったく理解できていない状態でしょう。ライフスタイルというと、近年デザイナーズマンションブームというのがありましたが。
大島 あれはまだ過渡的なものだと思います。まだまだ物質的な指標でしかない。窓が三角だとか、らせん階段やガラスブロックを使ったとか、コンクリート打ちっぱなしとか、そういう価値基準で測られていた。これではエアコン付きか、床暖房があるか、セキュリティはどうかという要素と、実はあまり大差ない。物質的な価値基準の積層でしかないんです。
江里口 建築家としてハード的なこだわりを持つとすれば、リノベーションでは制約が強いですね。基準法の問題もありますし、古いサッシなどをそのまま活かすとなると、隙間風が入ってきたりガタガタいったり。
大島 いま物質主義に基づかない立場と申し上げましたけど、そこにリノベーションの可能性があるんです。新築至上主義ではないリノベーション。昨年、豪徳寺の駅の近くの築40年の2階立て木造アパートを手がけました。オーナーさんが言うには、お風呂がないから賃料3万円台にしても入居者がいないと。
江里口 都心部のアパートは地主さんが自宅の裏庭に建てたりしてるんですよね。業界で 庭先アパート と呼んでいますが、場所が一等地でも、道に接していないからほとんど建て替えられないんですね。
大島 だから再生しなくてはというわけで管理会社に相談したら、リフォームしないとダメだという。出てきた見積もりは約3000万円。その予算ならハウスメーカーの新築が建っちゃうんですよね。それももったいない話。それだけコストをかけても、もともと木造のアパートだということは隠せないし、築40年であることを隠すこともできない。で、私どもの答えがどうかというと、モノをモノで解決するのではなくて、モノを物語で解決するんです。
江里口 具体的にはこの物件にどんなリノベーションを?
大島 近くにお風呂屋さんがまだ現役営業中の古い商店街があるんですよ。そこにはベーカリーもあり、お洒落な小物屋さんもあり、若い世代と昔ながらの歴史とが混在している。本当におもちゃ箱をひっくり返したような商店街。このアパートはそんな町の文脈の中に存在しているわけです。
江里口 駅から近くて夜も安全で、女性にとっても身近な住みやすい環境ですね。ただ、このままの風呂なしの木造アパートに女性は住まないですね。
大島 いま、お風呂屋さんもハーブの湯とかマッサージとか女性向のサービスを充実させているんですよ。元気な商店街があって、生活の利便性は非常に高い。そこで、木造アパートであることを隠さず、木の家に住むこと自体を楽しんでもらおうということにしました。インテリアもスギの縁甲板を使って板の間の感覚です。古い柱もそのまま。そんなことをやって再生して、結局コストとしては2000万円台前半、私どもの設計料を入れるとだいたいリフォーム予算と同じくらいになりました。ただ、リノベーションなら賃料は新築と変わらないレベルにできる。実際、非常に人気があって、ウェブサイトの待ちのリストで、常時数十名が待っているという状態です。
江里口 こうした木造庭先アパートは多いですから、相当引き合いも多いのでは?
大島 ただ、実際に二千数百万円かけてリノベーションするとなると、個人のオーナーさんの場合にはファイナンスの問題があります。銀行から見れば、建て替えるなら出すけれども、築40年にそんなお金を使わないでくださいと。私どもがこれまで実績を積んで来られたのは、実はファンドバブルのおかげもありました。
江里口 また今はファンドではなくてプロパティマネジメントの観点に戻りつつあるわけですね。
大島 これからどうなっていくのか楽しみです。現在は、私どもだけでなく、再生の実例ができていて、それが実際にどういう利益を生んでいるのか実績があります。トラックレコードが教えてくれますから、個人のオーナーさんにとっても状況は変わってくるはず。
江里口 プラン実行にあたって、ファイナンスの問題以外にどんな問題はありますか?
大島 やはり、実際にこれだけの投資をして本当に回収できるのかということ。通常の感覚では、40年経った建物に新築並みの賃料を払ってくれるお客さんがいるということは理解してもらえませんね。
江里口 最初の仕事をとるまで苦労されたのでしょうね。
大島 父が持っている建物がまさに築40年でしたから、お願いしてその一部屋をやらせてもらいました。当時、10坪で家賃8万9000円程度。大地山と二人で自分たちで工事をして、自分たちできれいに写真を撮って、賃料12万円に設定して、地域の不動産屋さんにこれで客付けをお願いしますと。それがすぐ決まったんですよ。9万円を切っていた物件が12万円。新築だとだいたい12〜13万円くらいですが、それに近い賃料で決まった。それをウェブサイトに掲載したりパワーポイントにしたりして営業しました。ほどなくファンドブームがきて、ファンドからみればデザインをアセットマネジメントの感覚でやるところが非常にもの珍しかったのでしょう。仕事をいただく機会が多くなって、その中でトラックレコードがどんどん積み重ねられていった。実績があるから今では皆さんに納得してもらえます。
江里口 建築と不動産が、まさにうまく融合した仕事になっている。本当に不動産のことをよく理解されていますね。これからの展開についてメッセージはありますか。
大島 とにかく一貫してお話しているのは物語ということ。「物件から物語へ」とよく話すのですが、まさにそれがこれからの時代の感性だと思っています。当たり前のことですが、モノで解決しようとするとコストがかかる。コストをかけても消費されてしまって、何年か経ったらまたモノで解決しなければならない。そういうサイクルに入っていってしまう。ではモノが多ければ付加価値が高いのかというと、賃料はそこまでとれない。利回りはどんどん下がる一方。だから、素晴らしい物件、いい物件は利回りが低いという矛盾が生じるんです。ただ、物語を持っている建物であれば話は別。二重サッシもセキュリティも要らない。洗濯機は全部外のまま、風呂なしでシャワーだけでいい。木製のサッシもそのまま。魅力的な物語次第ではそんな可能性もあります。こうして結果的に安くあがります。
江里口 20代前半の若者はモノに対してはもうお腹いっぱいなんですね。
大島 新築のように見えますが、申し訳ないけど40年経ってますという「申し訳ない」という感覚ではなく、40年の時間を物語に仕立て上げてメッセージを発する。木造アパートの持つ魅力を物語りに仕立て上げて、モノは要らないからそこに住んで物語に参加してみたいと思わせるしかけをつくっていくんです。
江里口 昔のアパートでは隣りの音もまる聞こえで、「マヨネーズある?」とかやってましたね。それでコミュニティができていた。
大島 実際そうなんですよ。似たような方が集まってくるので、住人同士、お互い仲良しになってくる。普通のアパートではあり得ないこと。
江里口 ワンルームなんか特にそうですけど、いかにベクトルを内側にもって、個人が完結した住空間をコンパクト提供するかという考え方ですからね。それとまったく逆行する考えですね。
大島 今の若い方はコミュニケーションを求めている。外のベクトルを求めているんですね。物語を求めている。もうモノはいいよと。建物は古いけれど自由な新しい考え。
江里口 今後はどんな物件を手がけてみたいとお考えですか。
大島 是非やりたいのはワンルームアパート。ワンルームアパートというのは、人の一生において10代後半とか20代前半に体験する「初めての自分の家」なんです。それってやっぱりすごく大事なんじゃないかな。この時期にどんな家に住むかとは、卵から孵ったひよこが何を見るかみたいなものですよ。30代になって家を買おうと思ったときにその人が買う家は、おそらくその延長でしょうね。子どもに与えるおもちゃみたいなもので、安物の新建材やモノに支配された家を与えていたら、当然のごとく想像力が欠如する。これでは若い人たちは被害者ですよ。
江里口 ワンルームマンション、ワンルームアパートというのはほとんど供給サイドの言いなりでしか作られていないですからね。高利回りだとか投資がどうだとか。
大島 住む側の若者にとって非常に大事なものであるのに、まったく考えられていない。これは問題です。彼らにとって本当にいいものというのは、決してゴージャスである必要はない。コミュニケーションにあふれたコミュニティがあって、創造力を育んでくれるようなワンルームアパートを作りたい。一種の教育玩具としての家ですね。
江里口 これからの不動産業界に対して、見方を変えて、不動産屋はもっと町のデザイナーになりましょうと、そういうことを伝えていきたいっていう感じですね。
大島 月なみな言葉だけれど、コミュニティとかコミュニケーションとか、もっと真剣に考えなければいけない。不動産業界はコミュニティを欠如させるような商品をどんどん作っています。
江里口 これから大島さんのような考えで家づくりをする建築家、不動産業者がどんどん増えていくといいですね。今日はありがとうございました。


インタビュー

不動産投資のネット時代到来に応えるべき企業の登場


インターネットで収益物件を逆オークショサイト「不動産投資の楽待」を運営しているベンチャー企業・ファーストロジックは今注目である。会員制の中でで不動産投資をネットで紹介するシステムへの期待は大きい。
株式会社ファーストロジック 代表取締役 坂口 直大さん
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――坂口さんはたいへん若くして起業され、古い体質の不動産業界の中でネットビジネスで注目を浴びておられますね。まず起業のきっかけについて、不動産との出会いからおうかがいしたいのですが。
坂口 大学卒業後、プログラマーとして就職しました。私が就職活動をした2000年度というのは、大学生の新卒の求人倍率が0・99倍、通常の求人倍率だと0・48倍という年で、どこの企業もほとんど採用をやっていませんでした。
――就職難のピーク、いわゆるロスト・ジェネレーション世代ですね。
坂口 その年、唯一採用の窓口が開いていたのがシステムエンジニア。当時2000年問題があって、システムエンジニアだけは不足していたんです。
――今でいうと介護の世界みたいなものですね。そもそも大学は理科系ですか?
坂口 いいえ、心理学を学んでいたので文系です。当時は文系でも理系でもシステムエンジニアになりたいという人は誰でも採用してくれたんですよ。それで滑り込んで、システム開発の仕事に就きました。私が入ったのは三次受け、四次受けの小さなプログラミングの会社でしたが、そこで10カ月働いて転職しました。もっとスキルアップしたい、もっと上流の仕事がしたいと思ったんです。次に、ウルシステムズという会社でシステムのコンサルタントを始めました。大企業の基幹システム、いわゆるメインフレームをオープン化するコンサルティングの仕事が主体でした。特殊なマシンや言語で作られたものを、どうやって誰でも知っている安価なマシンで動かすか、そのためのコンサルティングです。直接システムを作るのではなくコンサルタントとしてシステムを設計する人たちにアドバイスをする仕事です。
――それがなぜ不動産の世界に?
坂口 システムコンサルティングをやっていた2002〜2003年頃、ちょうどマスメディアで我々世代では年金が出ないのではないかという不安が取り沙汰されて、このままではまずいなと思って、アパート経営をやろうと思ったんです。
――アパート経営の情報はどこから?
坂口 2000年にロバート・キヨサキという人の『金持ち父さん貧乏父さん』という本が出たのが始まりで、2003年頃には日本でも不動産投資で賃貸経営に成功しているサラリーマンが書いた本が出ていました。その中の一つ藤山勇司さんの本を読んで、そこからですね。
――1冊の本というのはやはり大きな出会いになるんですね。
坂口 ちょっとやってみようかなと思ってセミナーに出たり、いろんな不動産投資家の人が書いた本を読みました。ある不動産投資家の本の書評を、今でいうブログみたいなものに掲載していたら、著者の沢孝史さんからご連絡があって、一緒にセミナーをやりませんか、商売をしませんかと言われたんです。後で聞いたら、どうやら私をネットの専門家だと勘違いされていたらしいのですが。それで、2004年から不動産投資のセミナーなどをやるようになりました。当時、不動産会社主催の物件を売るための無料セミナーはたくさんありましたが、不動産投資家で実際に成功している人の話が聞けるセミナーはなかった。沢さんのセミナーは、受講料1万円でも定員50人のところに3倍ぐらいの申し込みがありました。募集はネットだけで広告もなし。『お宝不動産シリーズ』の本が出ていたのがPRになっていたのでしょう。
――ご自身の不動産投資のほうはどうなりました?
坂口 自己資金がまったくありませんでしたらから、自分の不動産投資はいったんお預けです。セミナーをやったり、それをDVDにして通信販売したり、不動産投資のシミュレーションソフトをつくって売ったりしました。そんな中で、セミナーに来られる方へのアンケートで、いい不動産会社さんとなかなか出会えないという声が多いことに気が付きました。不動産会社さんに行くのが恐ろしいというのも一つですし、サラリーマンだと不動産会社に行っても相手にしてくれないというのです。そこをうまくネットを通じてマッチングできないかと思いました。それで会社を辞めて、この事業をやろうと独立しました。最初は1人で何から何までですから、創業して2〜3年は土日もなかったですね。
――起業して、これはいけるなと上昇気流を感じてきたのはいつ頃ですか?
坂口 うまくいきそうだと感じたのは、先々月、昨年の12月くらいですよ。単月で黒字になってきたんです。それまではずっと赤字を続けていたので、いつ会社がつぶれるかと計算しながらやっていました。
――いちばんお金がかかるのはどんなところですか?
坂口 この「楽待」のシステムを作るためにかなり開発費がかかります。1年目は私がコンサルティング業をやりながら資金を貯めつつ、システムを作っていました。2年目にようやくできたので、コンサルティングなんかを全部ばっさりやめて「楽待」の事業だけに専念しました。お金がかかるのはシステム開発と、買い手のお客さんを集めるための広告・宣伝です。ベンチャーキャピタルが出資してくれたおかげで、なんとかやってこられました。
――独立・起業の経緯についてお聞きしてきました。次に、「楽待」のサイトについて、仕組みを教えていただけますか?
坂口 「楽待」には、エンドユーザー向けと売り手の不動産会社向けと、それぞれの立場でメリットがあります。まずエンド向けに関しては、第一に自分で物件探しに行かなくても買いたい条件を登録しておけば向こうから物件を紹介してもらえること。2つ目は非公開の物件が手に入る可能性があるということ。たとえば、織り込みチラシとか、投げ込みのポスティングとかネット上に出ている物件以外のあまり表に出てこない物件の情報が届く可能性があります。
――非公開物件というのは、どういう物件が多いんですか?
坂口 激しく値下げをしているから、前に買った人の手前、表に出せない。たとえばマンションディベロッパーが最初3000万で分譲していたけど、半分売れ残ったからそれを2000万で売りに出すという場合です。「楽待」では、特定の買い手だけを不動産会社さんに選定してもらって、その方だけに物件情報をお送りします。
――まさにクローズドなマーケットですね。仕組みについて整理しましょう。まず会員募集はネット上だけですか? 会員数はどのくらいですか?
坂口 はい、ネット上で投資と住宅に別れていて、住宅のほうで1万人、月間純増で1000人です。投資のほうは今3500人いて、純増で200人です。純増といっているのは退会を引き算したものです。買い手が会員登録をするのは無料です。
――買い手のほうがサイトに出会う最初のキーワードは? たとえば「不動産」だけではトップページに出ないですよね。
坂口 「収益物件」と「不動産投資」これが2大キーワード。「収益物件」で検索する人は月間で1〜2万人。そこでだいたい5番目ぐらいに入っています。あと「収益物件」プラス「東京」とか、複合でだいたい1位なんです。
――東京を入れるんですね。確かに不動産は地域性がありますからね。
坂口 「不動産」で探す人というのは意外と少ないんですよ。基本的には、「新築」「一戸建て」「品川」とか、エリアと対象物件種別で上に行くように設計しています。
――サイトを訪れて会員になる率はどれくらいですか?
坂口 ここにポーンと新規で来てくれて会員になる率は0・8%くらい、1%いけばいいほう。100人来て1人会員になってくれればいい。
――それはすごいですね。不動産業界でも住宅業界でも「千三つ」と言って、DM1000件で3件電話があればいいと。実際に見に来るか、さらに買うかどうかとなると、何十万部とチラシをまいて、来たお客が5人とか。
坂口 買い手の方のメリットを2つ目まで言いましたが、3つ目は匿名で複数の不動産会社さんとやりとりができるということ。「楽待」から不動産会社に提供する買い手の情報はすべて匿名です。
――そうすると、安心感はありますね。
坂口 やっぱり自分の連絡先を明かして不動産会社さんに資料請求したりとか、不動産会社さんのお店に入ることに恐怖感を感じている人は結構多いんです。匿名でいろんな不動産会社さんから物件を紹介してもらって、匿名で質問をしたり、コミュニケーションがとれる仕組みを作ってあるので、信頼がおける担当者が見つかれば、そこで初めて連絡先を明かせばいいわけです。匿名で複数業者さんとやりとりできるのが三つ目のメリット。
――業者さんも、最低限、メールなり写真なりある程度その環境を持っていないといけないですね。不動産業界もその部分はだいぶ進歩したということですね。
坂口 賃貸に関しては進歩していますが、売買でネット集客に長けている会社さんというのはまだ1〜2割ぐらいです。エンドユーザーはメールでのコミュニケーションを求めるようになっていますから、不動産業界でもメールでの商談を覚えないといけないと思っています。我々は不動産会社さんに対して、商談メールの書き方の講座とか添削サービスなんかも無料でやってます。いま特に賃貸の分野では、携帯からのお客さんのアクセスがすごく増えているらしいんですよ。20代の彼らは生まれた時からネットがある世代。これから30代になって住宅購入層になったとき、彼らはネットで商品の問い合わせをしたり、購入したりというのが当たり前ですから、そこに対応できない不動産会社さんはつぶれていくのではないでしょうか。
――では、業者さん側からみたメリットはどうですか?
坂口 業者さんにとって有効な点も3つです。業者さんも売主さんから絶対広告しないで売ってくださいといわれている物件をお持ちですし、激しく値下げするようなものは大々的に広告はできない。そういう非公開の物件をエンドユーザーに直接紹介できること。2つ目は、買えるお客さんだけに物件情報を送れること。買い手のお客さんには買いたい条件のほかに属性も入れてもらっています。年収とか年齢とか、自己資金、ローンの残債、取引銀行など。
――では、名前が伏せられているだけで、属性は全部見えているわけですね。
坂口 住宅ローンが通るかどうかまで大体わかります。事実上ローンの予備審査を済ませるようなもので、買えるお客さんだけを選んで送れます。だから営業効率が格段にいい。チラシとか広告だとお客さんから電話があってから、本当に買えるかどうか、聞きづらいことを電話とか会って聞かなくてはならない。その結果、買えないとわかったら、今まで苦労してやってきたことが無駄になってしまいます。
――最近、特に新築マンションなどでは、必ず予備審査をしてから契約と言うのが定番ですね。
坂口 病院のカルテと違って、最初からそういう自分のことってなかなか言いたくないと思うんですよ。ある程度担当の営業マンと仲良くなってから打ち明けていくというのが普通でしょう。「楽待」では最初に属性が出ていて、住宅ローンがつく人だけにしか商品を紹介しないので、非常に営業効率がいい。これが二つ目のメリットです。
――では、3つ目は?
坂口 不動産会社さんで物件を開発したり仕入れる時に、住宅のほうで1万人ぐらいニーズがあるので、マーケットリサーチの参考情報としてお使いいただけるということ。これが3つ目です。
――いま業者登録は何社ぐらい?
坂口 150社ほど。どんどん伸びています。その中には大手の上場会社もたくさん入っています。
――会員で物件成約率はどれくらいですか?
坂口 成約したかどうかまでは追えません。不動産会社さんから買い手に物件が紹介されて、買い手の方が不動産会社さんに連絡先付きでお問い合わせをしたら、あとは個別に商談されていくので、その先に何が起こっているのかはわからない。そこで成約したからといって成約フィーをいただくわけではありません。ただ、成約できたと報告してくれる不動産会社さんもあって、それでどれくらい成約しているか、大まかに把握しています。価格帯としては下は300万、上は5億円ぐらい。成約率は、買い手の方から連絡先付きでお問い合わせが来る確率がだいたい10〜15%ぐらい。100人に送ると10〜15人の人が、連絡先付きで不動産会社さんにお問い合わせする。要するに、15人は自社の顧客になるわけです。そこから先の成約率は、報告いただいた会社さんの事例で平均すると10分の1です。だから、100人に送って10人お問い合わせがきて、そのうち1人が買ってくれる。我々は1件買い手の方に物件を紹介するのを2000円ぐらいの単価で売っているので、20万で1成約の確率です。
――この仕組みというのはまだ世の中では知られていないですね。エンドユーザーは登録すると情報がもらえるのだと分かるけれど、業者さんにはまだ認知されていない。
坂口 1年前で認知率1%でした。営業方法としては、一番はテレアポして営業に行くというスタイルですが、新聞広告を打ったり、プレスリリースで広報活動をしています。去年の12月から急に業者さんの認知率が上がってきましたが、テレビで取り上げてもらえたことが大きかったようです。それと口コミがようやく増えてきて、口コミからご契約いただけるというケースも増えています。
――「楽待」の仕組みにこれから加えていきたいものなどお考えですか。
坂口 いま不足しているのは、投資をしようという人にコンサルティングをしてくれる専門家です。現状では仲介業者が一応不動産投資のコンサルティングを行っていますが、それには無理がある。
――税金とか押さえておかなくてはいけませんし、買い替えしたらどうなるとか、所得税はどうなるかとか。
坂口 そういう知識的な無理があるのに加えて、やっぱり売ってなんぼですからね。仲介業者にはお客さんの立場に立ったコンサルティングはできません。中立な立場での不動産投資のアドバイスの部分をFPの方にやっていただけるといいのかなあと。
――不動産FP大募集ですね。
坂口 求められてると思うんです。ただし、問題は買い手が不動産投資のコンサルティングに月々のコンサルティングフィーを払うかというと、払いたがらないんです。まずは買い手に対して、コンサルにはフィーを払うんだという教育をしていかないとダメなのでしょうね。
――その辺の啓蒙活動をしていただけるといいですね。「楽待」でコンサルしてもらって成功した、「楽待」の顧問FPは最高だという事例をどんどん出して、ノンフィクションで書きましょうか。
坂口 実際に、コンサルを受けずに自力で投資した人がどんどん失敗しているんです。そういう実績とか事例をちゃんと蓄積していって、これから不動産を買おうという人たちに知ってもらわないといけないですね。1億や5000万の失敗をする人もいますから、月5万のコンサル料なんて安いものですよ。それは住宅ローンについても、住宅購入にもいえる。そういうコンサルタントがちゃんと食っていける文化が育つといいなとつくづく思います。弁護士先生や税理士先生に顧問料を払う感覚で不動産投資や住宅購入のコンサルタントにお金を払うような文化をつくりたいですね。
――最後に、この「楽待」を通じて、坂口さんが目指しておられるのはどのような世界でしょうか。
坂口 経営ビジョンとして公正な商取引のインフラを作るということを会社の目的に掲げています。それで社会貢献したい。いま不動産業界にスコープをあてて、「楽待」というインフラを使って公正な商取引の場を作ろうとしています。これまでの不動産ディベロッパーはモノを作ってから販売をしてきたので、強引な営業活動に走ったり、不良在庫をたくさん抱えてしまったりする。「楽待」を使えば、ニーズが先にわかるので、それに合った商品作りができます。それを広めていきたいのが1つ。あと、特に大きな物件だと間に仲介業者がたくさん入って手数料を分けるという取引慣習がありますね。あれをなんとか是正したい。「楽待」を使ってくれれば直接エンドに行けます。快適な営業活動の実現といっていますが、売り手と買い手でバランスのとれた力関係で商取引ができるようにしたい。加えて、ネットを使っているので、時間や距離の成約から解放されています。現在、国内で九州の人が北海道の物件を「楽待」を通じて買えるところまでは実現していますが、将来は、たとえばアフリカにいる人が日本の不動産を買えるようにしたい。そういうのを実現していこうと思っています。
――最近、相続でも、海外から相談がきたりします。私はフランスにいてもう日本には帰りませんけど、どうしたらいいですかとか。こういうのもネットがあればこそですね。
坂口 今も中国や韓国の方が「楽待」ちにニーズをいれていたりとか、ちょっと前だと中東の人が買い情報を入れていたりとかありました。中国や韓国の人と日本の不動産会社、これまでの商取引では簡単に結びつかなかった人たちが「楽待」を通じて結びついていくといい。こうした動きが活発な商取引になっていけばなあと思います。
――不動産マーケットの一大革命というと言い過ぎかもしれませんが、ネットを介してこれからガラガラポンで激動の時代に入っていくのは確実ですね。これからますますのご活躍、期待しています。


特集

データで見る相続最新事情パート4

国税庁は昨年暮れに平成 19年中(平成 19年1月1日〜平成 19年12月末日)に相続が開始し、平成 20年10月31日までに提出された申告書(相続税額があるもの)に係る申告事績を発表した。
今回はこのデータに基づき、相続の最新事情を分析してみた。
○課税割合は低迷のまま
同期間の被相続人数は約111万人である(図表1参照)。高齢化社会を迎え、被相続人の数がゆっくりと上昇していることが見てとれる。このうち相続税の課税対象となった被相続人数は約4万7千人で、課税割合は4・2%となっている。課税割合は、基礎控除額の引上げ等があった平成6年分以降での最低水準(平成16年以降4年連続)となっている(図表2参照)。
○課税価格、納付税額とも若干伸びる
また、相続税の課税価格は10兆6216億円(対前年比102・4%)で、これを被相続人1人当たりで見ると、2億2763万円(同99・2%)、また、税額は1兆2634億円(同103・5%)となっている(図表3参照)。これを被相続人1人当たりで見ると、2708万円(同100・2%)と計算される。
前年よりも課税価格及び納付税額が伸びた理由は、標準宅地の平均額が上昇したこと(図表2参照)が寄与しているものと思われる。
○相続財産の構成比は変わらず
相続財産の金額の構成比は、土地が47・8%(前年と同割合)、現金・預貯金等20・5%(対前年0・1ポイントの減少)、有価証券15・8%(前年と同割合)の順となっている。
土地と株式の価格が堅調だったためか、大きな変動は見られなかった。平成20年は夏以降、株式と土地の価格が急激に下落したので、20 年中の相続における財産の構成比が変わった可能性もある(図表4参照)。
○調査件数の8割以上で申告漏れ
また国税庁は平成19事務年度(平成19年7月1日〜平成20年6月30日)における相続税の調査の結果も公表した。調査は平成17年中及び平成18年中に発生した相続を対象の中心としている。
それによると調査件数は13845件(対前事務年度比98・5%)、このうち申告漏れ件数は11884件(同98・5%)であり、申告漏れ割合は85・8%(前事務年度と同割合)だった。
申告漏れ課税価格は4119億円(対前事務年度比101・0%)、これを申告漏れ1件当たりで見ると、3446万円(同102・5%)となっている(図表5参照)。
また、追徴税額は941億円(同100・2%)、これを申告漏れ1件当たりで見ると、792万円(同101・7%)となっている。
調査に基づく申告漏れ相続財産の金額の内訳は、現金・預貯金等が1517億円(対前事務年度77億円の増加)で最も多く、続いて有価証券707億円(同141億円の減少)、土地687億円(同13億円の増加)の順となっている。俗に相続調査において、最もマークされるのは現金・預貯金と言われているが、今回の調査結果は図らずもそれを示したことになった。
○海外資産の申告漏れが急増
海外資産関連事案については、407件(対前事務年度比111・8%)の調査を実施した結果、申告漏れ件数は334件(同114・4%)、申告漏れ課税価格は308億円(同208・0%)となっており、これを申告漏れ1件当たりで見ると、9227万円(同181・8%)となっている(図表6参照)。 グラフで見ておわかりのように課税価格は倍増しており、今後、海外資産に関する調査は一段と厳しさを増すことが予想される。
また、国税庁は財産の隠蔽をする悪質なケースとして以下の3事例を公表した。
@現金や金地金等を自宅や貸金庫等に隠匿して申告から除外
A被相続人の住所から遠隔地の金融機関の預金や不動産等を申告から除外
B財産の所在が海外であることを悪用して申告から除外
(編集室)


連載

現代によみがえる木賃アパート

本誌編集長 江里口吉雄
○都心回帰の動機とは
先日、知人の紹介でマイホームを新築したいという話が飛び込んできた。最近は住宅FPとしての仕事もこなすことが多い。早速、施主に会って建築の動機を確認した。定年までまだ数年ある50代の施主夫婦は、大の映画ファンで演劇も楽しむうえにグルメでワイン好きということだ。多彩な趣味を持っていることは現在のマンションの郊外の立地に魅力を感じなくなってしまったようだ。20年前にマンションを購入した当時は不便なことも多かったようだが、時の流れとともに都市化が進み、地下鉄が開通するだけでなく、ショッピングセンターができて住み心地のいい街にはなったようだ。
しかし、熟年の夫婦の趣味や楽しみを癒す文化の街ではないという。趣味を存分に楽しむには、どうしても電車に1時間以上乗って都心の映画館やデパートに出かける必要があるという。そうなると、もっと交通の便がいい場所に住み替えたくなるのだという。そしていよいよ都心へ住み替えたいという願いは夫婦2人の夢の実現となったようだ。
○木にこだわるセカンドライフ
それは施主夫婦の「木の家に住みたい・・・。」いう、兼ねてからの夢の実現でもあった。施主が購入した土地は実はちょっとユニークというか、ちょっと問題のある土地でもあった。いわゆる開発道路の行き止まりに僅か2・1mほど接道する変形敷地である。建築基準法の接道義務はもちろんクリアしているが、車をいれることができない。軽自動車ならなんとか入りそうである。施主がこの土地を購入したのは最近で、すでに不動産不況の始まりの時期でもあり、他にもっと建築条件のいい土地はたくさんあったと思われるが、施主はとても気に入っていた。それには理由があった。敷地の西側にある水路に面して大きな桜の木があったのだ。
施主の今住んでいる2階のマンションの窓からは桜が毎年満開になるそうだ。そんな窓の外の環境が新天地の土地探しのところでピッタリとはまったとのこと。確かにその敷地の西側に満開に咲く桜の木を想像するととても心がはずむような気がしてくる。
郊外のマンションから都心の戸建住宅へ
施主の現在の住まいであるマンションは4LDKで広さも120 の郊外の大型マンションである。部屋も広く居住空間としては何ら問題ないようであるが、やはり都心まで2時間以上かかる場所では不便であるようだ。子育ても終わり子供2人は独立してしまい、夫婦2人だけの住まいでもある。マンションの快適な生活から一戸建ての木造建築に敢えてこだわって住み替える。新天地のプランは敷地南西にある桜の木を意識して、1階南西には浴室、そしてリビングは2階からの桜が窓に広がる南西に位置している。住宅プランのスタートはまずゾーニング計画からはいるのは言うまでもない。そのゾーニングのポイントは桜の木であった。土地が30坪に延床面積30坪(100 )の間取りの中でのプランニングでもある。
木造空間と桜の木のコラボレーション
桜の木のある家・・・。現代の住宅としてはずいぶんと贅沢な家かもしれない。そんなこだわりがあってもいいのだろう。子育ての終わった世代の住宅というものは、木造空間の中で桜の木とともに新しい生活がはじまるのだという。最近、首都圏の住まいといえばマンション住まいであろう。もちろん郊外の一戸建てもあるのだが、一戸建てだからといって構造は木造とは限らない。住宅展示場にいけば、主要構造の大半はいわゆるプレハブである。プレハブとは、直訳すれば「前もって造ること」でもあり、工業化住宅そのものである。木質パネルもあるが、大半が軽量鉄骨の建物である。また、最近目に付く工法は、圧倒的にツーバイフォーである。本格的な木造建築=軸組工法は少数派である。住宅といえばハウスメーカーで建築するのが標準的であるが、敢えて木造にこだわりさらに土地にもこだわった事例ということになる。
都心への住み替えのひとつの提案
入居後施主の生活として、郊外の大型マンションから都心の一戸建て住宅への住み替えは楽しい日々の連続だという。都心といえばまだまだ地価は高いのが常識であるが、都心回帰の生活は敷地条件の悪い土地を敢えて絞り土地探しをして都心の一戸建て建築を実現できるのである。路地裏のちょっとした居酒屋や小さなインテリアショップ店を見るだけでも楽しいとのこと。都心の生活の楽しみは、散歩と自転車の行動範囲の中で趣味の世界が味わえる。まさに昭和レトロの木造空間をセカンドライフとして都心で満喫している興味深い事例でもある。


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