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Appoggio vol.18 2010 spring


対談

働く政治家になる。 それは働く母親として、 そして独立FPとしても…


ファイナンシャルキャスター、AFP・2級ファイナンシャルプランニング技能士 1973年東京生まれ。第40代ミス東京。大学卒業後、青森朝日放送にアナウンサーとして勤務。FP資格取得後、アナウンサー経験を活かし、“「話せる」「書ける」ファイナンシャルキャスター”として、資産運用から相続までFP全般や政治経済に関するテレビ・ラジオ番組に出演。海外投資の現地レポートやマネー誌への執筆も行っている。マネー関連のイベントの司会やパネルディスカッションのコーディネーターはもちろん、オリジナルの“お金美人”セミナーや話し方・営業PR術セミナー講師としても全国で活躍中。
『アポジオ』では創刊第2号から巻頭インタビューのインタビュアーを務め、明るく気さくな人柄と巧みな話術で登場した各界の著名人を魅了した。相続FP養成スクールや相続FP実務公開講座でも、講師術や話し方講座を担当、人気を集めている。 2010年7月の第22回参議院議員通常選挙に青森県選挙区から民主党公認候補として立候補予定。

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波多野里奈さん
株式会社ファイナンシャルアナウンサー代表取締役
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本誌編集長 江里口吉雄

今夏、元青森朝日放送のアナウンサー波多野里奈が青森選挙区から出馬予定。それは1人の母親、またファイナンシャルキャスターとしてのアクション。そして、第二の故郷・青森をFPとしても元気にしたいという強い思いがある。
江里口 7月の参議院選挙の青森県選挙区で民主党公認候補者に決まったそうですね。これまでのように気軽に仕事をお願いすることができなくなるのは残念ですが、自ら決断された道ですから、ぜひ思いを叶えていただきたいと思います。この『アポジオ』の歴史は波多野さんとともにあったわけで、2006年6月発行の第2号からインタビューを担当していただきましたね。一緒に振り返ってみたいと、バックナンバーを持ってきました。
波多野 懐かしいです。初回の不動産コンサルタントの林弘明さん、マザーズオークションの池添吉則さん、緊張しましたね。日本FP協会常務理事の伊藤宏一さんとのお話も楽しかったです。私がFPを目指すきっかけになった出会いでした。海江田万里さんには長くお会いしていませんが、これからまたお世話になりそうです。ラジオ番組をご一緒していた本郷尚さん、いつもにこにこで素敵な方です。
江里口 5年間、はやいですね。こうして見るとあまり変わっていないようですが、波多野さんにとっては実は公私とも激動の5年間だったのではないですか。
波多野 そうですね。プライベートでは結婚して子どもが生まれました。子どもはもうすぐ10カ月になります。仕事の面ではFPの資格を取って会社を設立し、ファイナンシャルキャスターというオリジナルの肩書きを考え出して名乗っています。「ファイナンシャルキャスター」のほか、会社名である「ファイナンシャルアナウンサー」と「お金美人」、3つの商標を取りました。
江里口 そして、今度は政治の世界へ転進ですね。どういう経緯だったのですか。
波多野 昨年11月に日経新聞で民主党が参議院選挙の候補者を公募しているのを見て、応募しました。新聞の「働く政治家募集」というキャッチコピーにビビビッときたんです。向こうが門戸を開いてくれたような気がして。もし私のような一国民の思いが政治に届くのならばと、挑戦しました。
江里口 「働く政治家募集」というキャッチはよかったですね。以前から政治への志はあったのですか。
波多野 ラジオ日本で政治番組を担当していたこともあって、関心はありました。でも、その頃は自分には縁遠いものだと思っていました。番組では政治家の方と普通にお話しますが、違う世界の人だという頭があって、まさか自分が政治家を志すとは思ってもみませんでした。昨年9月に民主党政権になって、ダイナミックな政権交代を目の当たりにしたことが大きかったのかもしれません。実際にこういうことが起こるのだなと。それに、ちょうど自分が子どもを産んで、政治と生活とが密着していることをひしひしと実感するようになっていました。普通の生活者、働く母親の視点で政治に働きかけをしたい、政権交代でこれからはそれができる政治になったのではないかとも思いました。
江里口 タイミングが合ったのですね。なぜ青森県選挙区で?
波多野 ご存知のとおり、私は1997年から2001年まで青森朝日放送でアナウンサー、記者として働いていました。大学を出て、社会人になった約4年間を過ごした青森は私の第二の故郷。生まれ育ちは東京ですが、社会人としては青森に育ててもらったと思っています。だから、今度は私がその青森に恩返しをしたいと。
江里口 そういえば、青森へFPの講演会に行かれましたね。
波多野 日本FP協会が毎年11月に全国各地で開催している「FPの日」のイベントでの講演でした。一昨年の仙台に続いて、昨年は青森支部から呼んでいただきました。候補者公募の話が出るずっと前から決まっていた仕事でしたが、いま思うと、ご縁があったのですね。ちょうど公募締め切りの直前に青森で講演をさせてもらったというのは、青森へと導かれていたような、なにか不思議な気がします。あの時は本当に久しぶりの青森でした。FP協会の青森支部の皆さんも、とても暖かく迎えてくださいましたし、以前の上司や同僚に会ったりして、改めて青森はいいところだなぁという思いを強くしました。
江里口 公募はたいへんな競争率だったのではないですか。応募者はどのくらいあったのでしょう?
波多野 公募に対する純粋な応募者が2000人くらいと聞いています。公募以外にも、各都道府県の支部組織からの応募者や推薦の候補者がいて、本当の倍率はわからないですね。
江里口 応募したあとはどんなふうに進んでいったのですか。
波多野 11月にまず小論文と書類を提出して、12月に面接がありました。面接の部屋に入ると、いきなり選挙対策委員長の石井一さんがいらっしゃったのにはびっくり。面接の感触は結構よかったんですが、しばらく何の連絡もなくて、ダメだったのかなと思っていました。そうしたら、お正月明けに連絡が来て、党の青森県総支部連合会(県連)の方に会ってくださいということで。
江里口 1月下旬から慌しくなってきたわけですね。
波多野 まだ候補者が私を含めて5人くらい残っている状態だったのですが、元民放の局アナが残っているらしいという話が漏れて、元の会社の人からおまえかと電話がかかってきました。1月に表参道で「とことん青森2010」というイベントをやっていて、ちょうどねぶたを見ている最中だったんですよ。まだ公表できない時期だったので苦しい対応でした。地元紙が最初にすっぱ抜いた形で記事になったのが1月25日。その日から私の名前がオープンになって、オフィスの電話は鳴りっぱなしでした。今まで取材する立場でしたが、今回、取材される立場になってみて、その気持ちがわかったというか、これはすごくたいへんだなというのが正直なところです。マスコミ対策のメディアトレーニングや話法の講師もやってきましたが、とても勉強になりました。
江里口 2月6日大々的に出ましたね。
波多野 2月4日に青森に入って、県連の選考委員会で面接がありました。その後、常任幹事会の決定を受けて、6日が記者会見。
江里口 まもなくご家族で青森へ移られるそうですね。選挙が終わるとどういう生活になるのですか。
波多野 もし当選したら、月〜金は東京で土日は青森という生活になりそうです。国会がないときは基本的に地元になるのでしょう。やはり住んでいないと受け入れられないから、6年間は青森県民です。
江里口 ファイナンシャルキャスターの仕事や会社はどうされるのですか。
波多野 当選したら、メインは国会議員の仕事になりますが、会社ファイナンシャルアナウンサーの代表はそのまま続けます。日常の仕事は後輩に任せて、できる範囲で講師の仕事などはやりたいと思っています。ただ、今はまだ具体的には考えていません。まず当選しないといけないから、そんな余裕はないです。少しでも早く青森に行って、1人でも多くの人に会いたい。選挙は1人ではできないんですよ。私が1人で早くみんなに動いてもらいたいと思っていてもダメ。青森に行って、まずはチームワークづくりからです。
江里口 立候補にあたって、どのような抱負をお持ちですか。
波多野 とにかく青森を元気にしたい。11月に青森に行って、正直、私がいたときよりも景気が悪くなっているなぁと感じました。シャッターがおりているお店も目立ちましたし、孤独死の数が増えているとも聞いています。
江里口 どんなアイディアをお持ちですか。
波多野 今年の12月に新幹線が青森まで開通します。新幹線で東京〜青森が3時間20分、一本で結ばれます。これまでは青森というと「遠い」という印象だったと思うのですが、すごく近くなる。この機会に首都圏のみなさん、そして全国の人に向けて、私が青森のトップセールスをしてアピールしたいと思っています。
江里口 東京をはじめ全国に向けて青森を売るということですね。
波多野 まず青森に観光客を増やしたい。そして、青森に住みたい人を増やす。青森は全国の都道府県で人口の転出超過率がいちばん高いのです。つまり青森を離れていく人が多いわけで、このままではいけない。青森に住み続けたいと思う人が増えれば、経済も活性化するはず。 住みたい青森 、 人の集う青森 にしたいと思います。青森にはいいところ、いいものがたくさんあります。まず知ってもらえば、みんな必ず青森を好きになってくれる。それには自信があるんですよ。
江里口 宮崎の物産館が新宿のサザンテラスにありますが、青森物産館をサザンテラスに作るとか。
波多野 実は青森の物産館「あおもり北彩館」は飯田橋にあるのですが、あまり知られていません。人の来やすいところでPRしたいですね。
江里口 まず知ってもらうこと。
波多野 新幹線開業で近くなりますから、特に東京の人にはどんどん青森に来てほしい。ただ、来てもらったときに元気な青森を見せることも大切だと思っています。7月に当選したら、12月の新幹線開業までに青森を元気にして、いい状態で東京からのお客さんを迎えたい。来てくれたときに元気がないと思われるのは嫌ですから。
江里口 波多野さんは我々独立FP業界が、初めての国政へ送り出す代表になるのではないかと思います。FPの視点から、政治に対して考えていることはありますか。
波多野 私はこれまでは、ライフプラン、お金に関する生活設計を通して主に個人の人生設計に携わってきました。これからは個人個人の夢の実現に加えて、もっと広い視点で、中小企業も含めて青森県の経済が活性化するように頑張っていきたいと思っています。FPの資格をフル活用して、知恵を絞っていかなくては。
江里口 FPのキャリアを活かして青森の中小企業オーナー、経済活動を応援したいと。
波多野 その中で、FPの認知度も高めていきたいですね。
江里口 青森でのFPの認知はどうですか。
波多野 ファイナンシャルプランナーといってもピンとこないかもしれません。でも、FP協会の青森支部の講演には100人以上、若い方からお年よりまでたくさんの人が来てくれて会場も満席。「美しく生きるためのお金の考え方〜ハッピーライフ&マネーマネジメント」というテーマでした。必ずしもFPという言葉には結びついていないかもしれませんが、正しいお金の知識を持って、幸せな生活を送ることへの関心は高いと感じています。
江里口 「普通の生活者」「働く母親」の視点を政治に活かしたいというお話ですが、波多野さんご自身はどんなことに取り組みたいと考えておられますか。
波多野 もともと母親と子どものための子育てしやすい環境づくり、働く母親を応援したいという強い思いがありました。これは自分が直接政治に関わるかどうかは別として、一人の母親、あるいはファイナンシャルキャスターとして、アクションを起こしていくつもりでした。
江里口 保育園の整備とか。
波多野 働く母親の支援というと保育園の問題が取り上げられますが、私は別の理想を持っています。お年寄りと同居する3世代ファミリー。元気なお年寄りがたくさんいらっしゃる中で、子育てと介護が日常の中に自然に共存している、そんな暮らし方が夢なんです。今回、青森に移るにあたって、私の母が一緒に行ってくれることになりました。まずは我が家でそれを実践してみます。
江里口 もともと日本社会はそうでしたね。核家族化で崩壊してしまった。
波多野 それを再現したい。首都圏では保育園が足りないことが働きたい母親にとって切実な問題ですね。3世代ファミリーが難しい地域では、シルバー保育、お年寄りの力を保育に借りるというシステムを活性化させたい。元気なお年寄りは子育てに参加することで、孤独な年金生活から脱却できます。子どもたちもお年寄りと接することで世界が広がるはず。そして、子どもたちは将来、介護でお世話になったお年寄りに恩返しするわけです。これはウィンウィンの関係にできると思います。
江里口 教育についてはいかがでしょう?
波多野 FP3級レベルの内容を義務教育に取り入れたいと考えています。少なくとも年金や社会保障のシステムがどうなっているのか、国民全員が知っておく必要があるでしょう。それには教育の中で仕組みを教えてあげることが大切だと思います。今の我々はそれがわからないままだから、年金保険料を支払う気がしないのではないでしょうか。いわゆる投資教育、マネーゲームではなくて、生きていくために必要な基本的なお金の知識、お金にまつわる社会の仕組みを教えていくのです。
江里口 アメリカでは株のゲーム、不動産ゲームが流行っていますが、そういうのとは違う基本的な金銭教育ですね。
波多野 義務教育についてはもう一つ、PR術もぜひ加えたいと思います。社会人として生きていく上で基本となるのがコミュニケーション力です。それなのに今の日本の教育は学力重視で、人間的な力を養うプログラムが足りないと感じています。私はアナウンサーのスキルと経験を活かして、ビジネスマン向けの話し方講座や営業PR術セミナーの講師をやってきました。ビジネスの現場でも、日本人には自己表現が苦手な人が少なくないですね。子どもの頃から自分の長所を知って、自然にうまく自分をPRできるトレーニングを積んでおくことが必要なのではないかと思います。私の子どもにはそんな国際人になってほしいと願っています。
江里口 最後に青森のPRをどうぞ。
波多野 青森県産のものはおいしい、元気が出ます。りんごと帆立が有名ですが、それだけでなく、魚介類も農産物も加工品も、みんな本当においしいです。心も体も元気にしてくれます。それに青森の人は情に厚い。親しくなると、ずっと長く深く付き合えます。素晴らしい場所もたくさんあるんですよ。たとえば、浅虫温泉。青森市から車で30分ほどで気軽に行ける距離ですが、陸奥湾を一望しながら浸かることができる温泉です。りんごが実ったときの岩木山とりんごの風景も絶景です。まだまだ魅力満載のものがたくさん。ひとことでいうと 青森大好き 、青森は本当にいいところです。私にとって青森はファイナンシャルキャスターの出発点。青森に育ててもらった私が、一度青森を離れてみて、その魅力を再発見できた気がしています。その青森でまた暮らせるのはとても楽しみです。
江里口 これから実際の政治活動に入るわけですが、具体的にはどういうことを。
波多野 最初は街頭演説でしょうね。いわゆる辻立ちです。
江里口 小沢幹事長にはなにか言われましたか。
波多野 体力が勝負だぞって。
江里口 本当にそうですね。体をこわさないように頑張ってください。
波多野 ありがとうございます。江里口さんもぜひ青森にいらしてくださいね。
江里口 応援に行きますよ。この『アポジオ』の対談が公認後初めての所信表明ですね。今日はタイトなスケジュールの中、ありがとうございました。


インタビュー

税理士補助業務の老舗として、歴史と信頼がビジネスの原点


1955年生まれ。神奈川県出身。法政大学卒。1991年3月、旧・国土工営株式会社に入社。2003年3月、旧・国土工営の業務を引き継ぎ、新たに株式会社国土工営を設立、代表取締役に就任。首都圏、近畿、東海の11の税理士協同組合と提携、相続・不動産問題の実務スペシャリスト集団として、税理士とともに地主・富裕層に対する相続コンサルティング、中小企業の事業承継コンサルティング等を行っている。クライアントと顧問税理士、国土工営の3者が協議しつつ、一体となって問題解決にあたる「トリニテーシステム」は同社の登録商標。あくまでも税理士のサポート役、黒子に徹するスタンスをとりつつ、実務ノウハウを活かして相続問題解決のための調整・推進役として活躍している。

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澁谷一夫さん
株式会社国土工営 代表取締役

新生・国土工営のスタートは、相続業界のパイオニアでもあり、税理士をバックアップしながら相続ビジネスをコンサルタント業としても確立させている。
――税理士さんと提携して、相続、不動産、事業承継を3本柱とした事業を展開されているとお聞きしています。御社のビジネスについて詳しくおうかがいできますか。
澁谷 ひとことでいえば、相続にまつわる周辺業務全般です。事業承継はいわば法人の相続ですし、不動産の取扱いは相続関連に特化しています。現在は、ほかに財務省の物納不動産の管理・処分を神奈川県と関西で手掛けています。民間で物納する仕事もお手伝いしながら、国有地になったらそれを管理する、いわば 循環ビジネス です。正直いうと、官も民も両方やれば一挙両得かなというところも多少あって、これを加えて4本柱でやっています。
――相続に特化されたきっかけは?
澁谷 現在の株式会社国土工営は、8年前に倒産した国土工営株式会社の業務を、従業員ごと引き継いで、私が立ち上げた会社です。もとの国土工営は昭和23年設立で、一貫して国有財産の管理・処分業務をやっていました。戦後、財産税という制度があって、多くの地主さんが物納しました。ところが、大蔵省の役人は物納されても不動産のことがわからないので、どうにもならないわけです。そこで、民間企業に管理・処分を任せようということで、民間企業に業務が委託された、その中の1社が国土工営だったのです。高度成長期に地価がどんどん上がり相続税の負担が重くなる中、税理士と国土工営のノウハウを組み合わせれば、相続税の問題で苦しんでいる地主さんたちを助けられるのではないかと、有力な税理士先生方からのご意見もあって提携ができました。それが「トリニテーシステム」の始まりです。
――相続人のために国土工営さんと税理士さんとがそれぞれの専門知識とノウハウを持ち寄り、相続人と一体となって、相続問題の解決にあたるというものですね。
澁谷 要は、伝統的業務の国有財産の管理・処分で培ったノウハウを民間で活用できないかということで不動産に参入したわけです。物納が多いなら、国が受け取る前にお金に換えて納めたほうがいいのではないかと。現在の新しい国土工営も同じスキームですが、新たにそれぞれ税理士協同組合と提携をやり直して、やっと信用もでてきたところです。いいところは引き継ぎ、悪いところはカットして、新しい気持ちやっています。
――新生・国土工営さんとして、心がけていることはありますか。
澁谷 相続ビジネスで周辺の様々なサービスを提供するには、まず自分たちが勉強しなくてはいけません。今年のスローガンは、どの会社よりもみんなで勉強しようということ。土曜も出てきてまる1日勉強したり、平日に社内の事例交換の時間を設けたりしています。せっかく多くの事例があるのに、これまで会社としてノウハウがあまり蓄積されていませんでした。個人のスキルの中で仕事をこなしていたわけです。そこで、情報を共有して共有財産とし、誰でも同じトークができるように全員のスキルを上げていきたい。常に勉強していいサービスを提供することを心がけていないと、質のいいサービスはできません。税制も変わるし、時代と共にサービスの質はどんどん低下してしまう。税理士先生以上に勉強しようということですね。
――税理士先生以上に勉強とは厳しいですね。
澁谷 相続税は税理士先生にも得意・不得意があります。我々のミッションは不得意な先生でもサポートしてきちんと仕事ができるようにお手伝いすること。我々がサポートして先生に税務申告をやっていただくのです。一方で極端に資産税に特化した先生からもご依頼いただきます。難易度も様々、色々なケースがあります。ときには税務調査に立ち会うなど、できる限りサポートします。
――相続税は、税理士の先生によってかなり違いが出るのですか。
澁谷 資産税が得意な先生にかかれば、相続人が不利益を被ることはありません。一方で、初めてやるような先生だと評価で損をしてしまったり、先生によってずいぶん差があるのは事実。我々は全てを踏まえたうえで、関与した先生をサポートするために目いっぱいできることをやる。評価ならこういうふうにできるんですよ、広大地を使ったらいいんじゃないですか、利用区分ごとに評価するんですよとか、そういうアドバイスをしながら、クライアントが損をしないようお手伝いします。先生がきっちり相続税の業務を終えることができるよう、黒子に徹してサポートするというのが我々のスタンスです。
――提携されている税理士協同組合から依頼がくるのですか。
澁谷 仕事の依頼は個々に税理士先生からきますが、国土工営は税理士協同組合の提携企業として扱われ、税理士業界全体に対してPR活動ができるのです。支部に行って宣伝したり、研修会をやらせていただいたりしています。
――税理士先生とのお付き合いで、難しい点はありましたか。
澁谷 難しいことは数え切れません。税理士の先生はそれぞれクセがあるし、プライドも高いので、人間関係・信頼関係を築くのは最初は難しい。ただ、実務に入ってクライアントに喜んでいただくと、税理士先生も喜んでくださいますからね。付き合い方はいかにいいサービスを提供できるかに尽きると思います。
――澁谷社長がこのお仕事に入られたきっかけは?
澁谷 大学を出て金融機関に就職したのですが、家業で貸宅地を持っていたものですから、自分もそういう知識があったほうがいいかなと思って宅建を取りました。それで実務ノウハウを学びたいなと思って、宅建の資格を活かせる仕事はないかなと探していたら、うちの顧問税理士が国土工営という会社があるよと勧めてくれた。それがきっかけです。だから本当はずっと勤めるのではなくて、4〜5年勉強してノウハウを盗んであとは家業をやればいいかなと思っていました。それが骨をうずめるまでになってきたとは。
――ご実家が地主さんなのですね。
澁谷 たいした規模ではありません。相続税をおさめる人の平均納税額は2700〜2800万円ですが、私の実家もその程度です。ただ、これから遺産取得課税方式に変わるとしたら、広く浅く取ることになり、納税の件数はすごく増えると思います。その意味では成長産業なのですが、一方で納税額はどんどん低くなりますから、数をこなさないとなかなか利益に結びつかない。いかに特化して数を取るかが今後の課題になると思います。世間では遺言書を書くのが流行っていて、信託銀行がマーケットを食い荒らしていますが、最終的に我々に依頼がくるケースも結構あります。彼らはサラリーマンですから、いくら執行だ、不動産を処分するのだといっても土日は仕事をしません。相続人の方が困っているのを見れば、我々は率先してお手伝いします。銀行や信託銀行など大手にいいとこどりされてしまっているのが今の相続現場なのです。
――リアルなお話ですね。
澁谷 本来、個人の人生と深くかかわるFPや税理士の黒子みたいな我々が中心となって、最後まで作業をしあげていくのが本当の相続対策です。税理士先生と一緒に、ご本人も相続人も交えて生前から話をして、二次相続も見越したうえでどれだけ優良資産を遺せるか、納税原資をどこに求めるか、ポートフォリオをきちっと組んで提案型の相続対策をやっていかなくてはいけないとつくづく思います。
――相続が発生してからでは遅いわけですね。
澁谷 そうです。平成18年度に物納制度が改正されて、物納は非常にやりにくくなりました。ここ1年、土地が売れず物納したい人が増えてきています。ただ、金銭納付困難な理由書の審査が厳しくて、物納したくてもできないケースがかなりある。土地であれば、生前に測量もして境界確定もしておかないと、時間がかかりすぎて利子税がかさんでしまいます。前のイメージの物納とは違うのです。そういうことを先生方に一生懸命アピールして、なるべく生前から我々が関われるように提案しています。
――税理士さんの意識を変えていく必要があると。
澁谷 ただ、税理士先生としてはご当主がお元気なうちに亡くなった後の話はしにくいものです。その辺は、我々が行って、第三者的にちょっと言いにくい部分もお話したりします。あとで先生に聞くと、「なんか、やる気になったみたいよ」なんてね。
――競合他社さんとの違い、強みは?
澁谷 現場主義という点でしょうか。相続現場では、分割協議で殴り合いに巻き込まれることもあります。机上ではわからない、現場の問題や人間関係の難しさに直接立ち会ってきました。みんなが仲良くスムーズに分割ができるようアドバイスをしていくのが一番ですが、実務を経験していないと言えない部分がかなりあるのです。たとえば、以前は家督相続で長男が大半を相続するのが当たり前でしたが、いまは法定相続分で分割するケースが多い。しかし、資産家の旧家にあっては本家として親戚や地域とのつきあいとか、墓を守るとかいろんな役割がある。それにはお金がかかるわけです。それを関係者にわかってもらって、長男はこの家を代々継いでいくのだから、法定相続分ではなく少し多めにしましょうと、アドバイスすることもあります。そういう嫌なことも言わなくてはならない。みんなが納得したうえで相続できるよう、旧家には旧家にふさわしいアドバイスがある。対策を提案するとき、家柄なども考慮しなくてはいけないと思います。ただお金の分捕りあいになってしまうと悲惨ですから。
――たいへんですね。
澁谷 現場主義の実務家だからこそのアドバイスができること、それが我々の生きる道だと思います。FPの方々も、相談現場での経験からアドバイスできることがたくさんあるでしょう。お互い、そこが活躍の場ではないでしょうか。
――実際に案件があった場合、どのような進め方をしておられますか。
澁谷 不動産があれば、全部調査して評価します。税理士先生にも評価していただきますが、それと突き合わせて、もっと安いのではないかなどと協議する。その後に分割の話です。我々は、この不動産を売ってほしいと言われて引き受けるのではなく、相続があったらこれを売って納税資金にしましょうという提案型です。それを、税理士先生とクライアントと我々、三者で報告会をやりながら進めていくわけですから、手間と時間がかかります。最後は喜ばれて、ああよかったと言っていただくこととが何より嬉しいですね。それと適正利益をいただくこと。これが目的ですから。
――不動産を処分する際の仲介手数料のほかに、コンサルティング料をとっておられるのですね。
澁谷 出口は不動産かもしれませんが、その間のアドバイスや提案も我々の仕事。実はただほど怖いものはないのです。きちんと提案書を作成してアドバイスをするので、それに対してフィーをいただく旨を説明して契約を結びます。不動産があれば、実際にいろいろなところに行って調査をしなくてはいけない。役所調査とか、接道がどうか、再建築はできるかとか。その上で納税に充てられる財産、充てられない財産を仕分けする、そこまでがコンサルですね。調査して報告・提案書を出した段階でフィーをいただきます。それから次の段階に進み、分割協議を経て、納税のための処分まで来て、初めて宅建業務です。以前は出口でもらえばいいと思っていたのですが、不動産の処分は別だということで、出口までいかないものも結構多い。これではビジネスとしてまずいですから、途中で提案をして、コンサルティング料をいただくようにしています。この方式もだんだん根付いてきたと思います。
――段階を踏んで、なかなかたいへんなお仕事ですね。
澁谷 税理士先生と我々だけでなく、様々な専門家が関わってきます。司法書士、測量士、土地家屋調査士、みんなでやらなくてはいけない。彼らをグループとしていかにコントロールするかですね。うまくまとめて、スケジュールどおり進行させる。我々は進行役みたいなものです。納期限までに納税できるようスケジュール管理もやります。売るのであれば測量しなくてはいけないから、調査士さんなり測量士さんを呼んできて、いつまでに仕上げてくださいとお願いする。買主さんも探して、いつまでに契約しましょうと話を進めて、納期限までにお金にしなくてはいけません。
――毎年100万人が亡くなる高齢化社会、納税しないまでも、亡くなれば相続手続きは必要ですね。相続ビジネスのマーケットをどうお考えですか?
澁谷 相続手続きでは、最終的には処分する、つまりお金で分けなくてはならないケースが意外と出てくるのです。そこがビジネスチャンスですね。細かい相続手続きとか、保険がどうの、金融資産がどうのと相談にのりながら、いかに不動産の処分までとれるかが今後の課題です。大型の案件は少ないですから、数をこなさなくてはいけない。老老介護などと言いますけど、相続は老老相続ですよ。80、90の人が70歳に相続させるわけです。いまの70歳は困っていない人も結構いますが、問題はその次の相続。どんどん分散化してしまって、最後のマイホームとか田舎の要らない土地とかを誰かが助けてあげないといけない時代がきます。そこにも我々の出番はあると思います。大きな案件を追いかけるのではなく、数をこなしつつ、丁寧に対応していかないとね。
――新しい戦略はありますか?
澁谷 戦略なんてありません。どんな案件でも嫌がらずに丁寧にアドバイスするだけ。その人の親戚が大地主さんだったりして、紹介してくれるかもしれない。だから、選り好みをせず、常にいい仕事を心がけてやることが財産になるのです。不思議なもので、資産家同士のつながりは多い。ここの資産家の娘さんが別の資産家に嫁いでいたりします。富裕層の中では必ずそういうことがあるので、いい仕事をすることを心がけていれば、紹介で仕事も増えてきます。もう一つ、相続支援ネットさんの相続FPをはじめ、相続業界で手を組んで、マーケットを拡大していくことが重要ではないでしょうか。我々実務家にしかできない、痒いところに手が届くようなビジネスで、相続や事業承継で困っている方々のお役に立てればと思っています。
――相続ビジネスはこれからがチャンスかもしれませんね。FPの間でも相続への関心が高まっているように感じます。実務家どうし協力して、一緒に成長していけるといいですね。ありがとうございました。

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インタビュアー 田川えり子

フリーライター・リポーター・インタビュアー 大学卒業後、メーカー勤務を経て、1987年ブラックマンデーのその日からFP会社の事務に従事し始めたことが縁でFP業界の世界に入る。 現在はFP会社での経験を活かし、フリーランスの立場でFPセミナーの企画やセミナーリポート、インタビューなどに携わっている。マネーとキャリアという視点と、人と人との関りを大切にする心をベースに、役立つ情報を提供していきたいと考えている。AFP・キャリアディベロップメントアドバイザー。



特集

データで見る相続最新事情 PART7


海外資産の相続税申告漏れが顕著
相続は毎年約100万件発生するが、その中で相続税の課税対象になったのは約4万件、さらにそのうち、税務調査の対象となった数は約1万4千件であり、相続税課税対象者の約35%が調査のターゲットになっている。これは法人税4%、所得税1%の実地調査率とは大違いであり、相続税の申告をした者は、その後、高確率で税務調査が入ると言うことを念頭におくべきだろう。
国税庁は昨年暮れに平成20事務年度(平成20年7月から平成21年6月までの間)の相続税の調査に関する結果を公表した。それによると、海外資産の申告漏れが前回の調査より14%も増えていることが判明した。富裕層は高成長が期待できる海外に投資するケースが増えていると言われるが、彼らに相続が発生した際には国税庁の厳しい監視が待っていることを認識すべきだろう。
申告漏れ課税価格は 前回調査より減少
国税庁は、平成18年中及び平成19年中に発生した相続を中心に、国税局及び税務署で収集した資料情報を基に、申告額が過少であると想定されるものや、申告義務があるにもかかわらず無申告となっていることが想定されるものなどに対して相続税の調査を実施したと公表している。
 調査の件数は1万4110件(前事務年度1万3845件)、このうち申告漏れ等の非違があった件数は1万2008件(前事務年度1万1884件)、非違割合は85・1%(前事務年度85・8%)となっている。申告漏れ課税価格は、全体で4095億円(前事務年度4119億円)となっており、前回の調査より約24億円減少している(図表1参照)。
また、申告漏れ相続財産の金額の内訳は、現金・預貯金等1380億円(前事務年度1517億円)が最も多く、続いて有価証券776億円(前事務年度707億円)、土地675億円(前事務年度687億円)の順となっており、現金・預貯金が137億円減少し、有価証券が前回調査より約69億円増加していることが目立つ(図表2参照)。
さらに、追徴税額(加算税を含む)は、全体で931億円(前事務年度941億円)で前回より10億円減少しているが、重加算税の賦課件数は2052件(前事務年度1914件)、賦課割合は17・1%(前事務年度16・1%)となっており、前回調査よりも10%程度増加している(図表1参照)。
海外資産関連の調査を強化
国税庁は、相続税調査の実施に当たり、海外資産の把握に努めており、特に、資料情報や相続人・被相続人の居住形態等から海外資産の相続が想定される事案については、積極的に調査を実施しているほか、調査の過程において海外資産の取得が把握された場合にも、深度ある調査によりその解明に努めていると公表している。事実、今回の調査では475件(前事務年度407件)の調査を実施し、海外資産の調査を著しく強化している。
その結果、国内資産の申告漏れを含め377件(前事務年度334件)の非違、353億円(前事務年度308億円)の申告漏れ課税価格が把握された。1件当たりの申告漏れ課税価格は9362万円で、相続税調査全体の平均(3410万円)の2・7倍となっており、海外資産が相続税申告漏れの温床になっている姿が浮き彫りになった(図表3参照)。
申告漏れ件数、課税価格とも増加 6・3%以上
資料情報等から申告納税義務があるにもかかわらず無申告と想定される事案(無申告事案)に係る調査件数は555件(前事務年度504件)、このうち申告漏れ等の非違件数は467件(前事務年度420件)、申告漏れ課税価格は661億円(前事務年度645億円)、申告漏れ本税額は41億円(前事務年度45億円)と公表された(図表4参照)。
申告漏れ件数は前回比11%増だが、申告漏れ課税価格は前回比2・5%増にとどまった。申告漏れの本税額も前回比で−7・7%になったことから、申告漏れ案件は規模が縮小して件数が増加したことがわかる。
調査の時期は秋がメイン
相続税の調査が行われる時期は秋が主である。税務署は7月末で申告期限の到来する相続税の申告書を締め切り、8月から12月までを調査にあてることが一般的である。通常、相続税調査は資産税課が担当するが、彼らは譲渡所得の調査も手がける。昨今、不動産の譲渡件数が減少しているため、その分、相続税の調査に割ける時間が増えていると言われている。したがって相続税の調査は1〜3月を除いた4〜12月に行われるようになり、調査にかける時間も以前より増える可能性がある、との説もある。
(編集室)



連載

相続FPは執事である。そして、その使命とは。

本誌編集長 江里口吉雄
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映画「英国王 給仕人に乾杯!」 オフィシャルサイトより転載

最近、あるコンサルタント会社の方と話す機会があった。まだ25歳の若い女性であったが、3年前、世にいう就職氷河期の延長で大学を卒業してもいい就職口がなく、とりあえず小さな不動産会社に就職したようだ。毎日、不動産の現場で先輩社員から仕事を教わり、それなりに不動産の仕事は覚えたようだが、やはり社会人としての一般知識やマナー等は教育もされないため不安があり、自己啓発として宅建とFP資格を取り、再就職した会社がコンサルタント会社ということだ。
入社してすぐに社内試験を受けたようだが、その試験にFPの知識が役にたったようだ。しかし、それよりも、先輩の営業力に惚れ惚れする毎日であるという。彼女の口からは「営業の世界はコンシェルジュですね」という言葉がでてくる。
コンシェルジュとは英国式の言葉であって、日本語でいえばそれはまさに執事という。そこで、そもそも執事とは何なのかということを歴史的にまず検証してみたい。執事といえば秋葉原から発生してすっかり繁華街の定番となったメイドカフェ(メイド喫茶)と執事カフェ(執事喫茶)が連想される。この執事カフェは、メイド姿のウエートレスの接客であるメイドカフェ(メイド喫茶)とは別に女性客向けとして発案されたものだ。ウェイターが執事の格好で迎えてくれるカフェ(喫茶)は、イギリス貴族の邸宅をイメージしたシックな内装と本格的な紅茶が売り物で、イギリス貴族に仕える執事のような制服を着用した男性が対応している。
いずれもこの執事カフェの出所はオタク文化の中でのヴァーチャル体現のひとつとして発展してきているものだ。メイドカフェや執事カフェの出現で執事ということばがすでにすっかり大衆化されたが、執事というその言葉は大衆にとって貴族を疑似体験できるという憧れでもあるのだ。その憧れや願望の根源はやはりその歴史的な執事の仕事そのものにあるものと思われる。
具体的に執事の仕事はどんなものであったのか。執事とはヨーロッパの中世においていわゆる貴族や上流社会における家庭の主人の補佐役としての家事使用人である。その後、近代以降になってイギリスのバトラーという上級使用人のことを指すようになる。家事使用人として最高位にある執事(バトラー)は、上流階級や裕福な中流の家庭には多く見られたようだ。
執事は、本来の職務であるご主人を給仕をするだけでなく食器や酒類の管理とご主人の代わりに使用人全体を統括することも使命である。執事の仕事は、大きく分けて@食器や酒類の管理とA使用人の管理そしてBご主人の給仕や身の世話の三つである。執事の地位は、屋敷内で客室係などの下級の男性使用人全体を統括する立場にあり、屋敷の地下室や台所で雑魚寝する下級使用人とは違って執事は個室を持つことが許されていて、大きな屋敷の執事であれば身の回りの世話に専属の使用人が割り当てられていたという。
執事の服装は、ご主人と同様に「ジェントルマン」の服装をしていたが、わざと流行遅れにすることで使用人としての立場を示していたようだ。執事の本来の仕事はご主人への給仕とそれに関連した食器類、酒類の管理であるが、他の使用人の監督や灯りの準備・戸締まり・火の始末など屋敷の全体的な管理もしていた。執事は、ご主人の食事のときに給仕する。給仕といっても他の使用人の運んできた料理の覆いを外したり、ワインを注いだりするだけで、食事中はご主人の後ろにいるようになる。
イギリスの上流から中流の家庭での食器はたいへん高価なものであって、その食器の取り扱いには細心の注意が必要であった。ナイフやフォーク等の銀食器は決して黒ずむ事の無い様にいつも磨き上げられていたという。もちろん食器類の洗い残しや破損などは絶対にあってはならないもので、高価な食器類の盗難や紛失がないように厳重に保管することも執事の重要な仕事である。執事の重要な仕事のひとつに酒類の管理がある。ビールの醸造工程やワインの瓶詰めなどに関する技術や知識等が必要とされ、ワインの品質に関する知識も執事に不可欠でありワインセラーも執事の管理下にある。
残念ながら、現代ではそんな執事はいつの間にか消え去ったが、その執事の精神は現代社会でもそのまま引き継がれて生き続けている。現在の執事は、使用人の管理者というよりも、秘書と運転手と従者を兼ねた存在になっている。執事の精神は、あらゆる仕事場で分散して生きおり、いわゆるミシュランの三ツ星級のレストランのウェイターからホテルのフロントやゴルフ場のドアマンやハイヤーのドライバーに至るまでが執事の後継者である。
相続FPは執事として、お客様(相続人)と初めての出会いから仕事が始まる。そうなるとお客様(相続人)との初回面談での出会い方が重要である。
相続人との出会いでは、初回面談からいきなり相続人から相続問題の全てを打ち明けられることもある。相続FPビジネスは、お客様(相続人)に会った瞬間から数秒でお客様(相続人)の執事になれるかが勝負かもしれない。
実は、お客様(相続人)が相続FPに仕事を任せるかどうかは、出会った最初の数秒で感じた@言葉A声B視覚の三つの要素で決めている。執事の世界を見るには、1年ほど前に公開されたチェコ映画「英国王給仕人に乾杯!」が面白い。いずれにしても執事としての仕事をいかにこなすかが相続FPの使命でもある。相続FPは執事であるし、また執事でありたいと願うばかりである。


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